皆さん、こんにちは!
社長リタイアサポーターの松田浩一です。
最近、政府の成長戦略において、中小企業の廃業に関して大きな方向転換が図られました。
本稿では、この大きな方向転換についてご紹介しています。ぜひお読みください。
KPIの見直し
7月に政府が成長戦略(2020年)を閣議決定しましたが、成長戦略の具体策や進捗を報告している「成長戦略フォローアップ」(以下では、フォローアップと称します)という付属文書があります。
このフォローアップの中で、中小企業の廃業に関する扱いが変わりました。
どういうことかと言うと、フォローアップの中に中小企業・小規模事業者の生産性向上について言及している個所があります。
その中に関連施策の成果(進捗状況)をKPIという数値目標の到達度合いで示しているのですが、2019年は次のように記していました。
開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す
⇒2017 年度:開業率 5.6%(2016 年度:5.6%)、廃業率 3.5%(2016 年度:3.5%)
それが、今年は次のような表記に変わりました。
開業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す
⇒2018 年度:開業率 4.4%(2017 年度:5.6%)
お気付きでしょうか。
開業率が「廃業率を上回る状態に」することが取り下げられています。その結果、比較する必要がなくなったので、廃業率を表す数値も削除されています。
これはどういうことを意味すると思われますか。
廃業率が開業率を上回ってもやむを得ない、とは
政府はこれまで、中小企業の数を維持することを目標としてきました。
廃業する企業が一定程度存在することはやむを得ないとして、しかしそれを上回る開業を促すことで、全体としての中小企業の数を維持、確保することを目指してきたのです。
しかし「開業率が廃業率を上回る状態」を取り下げることによって、廃業率が開業率を上回ってもやむを得ないという考えに転換したのです。
つまり、廃業が増加しても構わないということなのです。
言うまでもなく、コロナ禍により経営環境は厳しい状況です。政府の意向を受けて金融業界が、今まででは考えられない融資姿勢で中小企業を全面的に支えています。
しかし高齢の経営者の中には、将来の返済負担を考え、融資に尻込みする人もいます。
また運転資金は確保できても、新しい経営環境を乗り切るための投資にまでは手が回らない経営者も多いことでしょう。
もちろん、コロナ禍を乗り切るために、当面は政府も引き続き中小企業を支えようとするはずです。しかし、政府の努力にも限りがあります。
このような事情を考えるならば、残念ながら今後、廃業が増えることは確実でしょう。
ただ、こうした状況を踏まえて実態に合わなくなるから、政府は開業率が廃業率を上回ることを放棄したのか。
いえ、決してそんな単純なものではありません。
政府の大きな方向転換の背景には、もっと大きな政策の方向性があると考えるべきでしょう。
これについては、次の機会に触れたいと思います。
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