突然の事業承継で社長になった女性

腕を組む女性社長

2月22日の日本経済新聞で、事業承継で突然社長になった女性が取り上げられていました。
その女性は、夫が亡くなる20日前に、夫婦で社員と話をして社長交代を決めたとのことでした。

中小企業の事業承継は今後、ますます社会的な問題としてクローズアップされることが必至です。
そのメインテーマは、後継者不足による廃業です。

しかし、夫や父から妻や娘が社長を引き継ぐことに伴う問題も、今後大きなテーマになっていくことでしょう。

女性社長の比率と就任経緯

帝国データバンクが、個⼈事業主や非営利法人、公益法⼈などを除く全国約116 万社を対象に調査を⾏ったところ、2020年4月末現在の女性社長の割合は8.0%でした。

30年前の1990年からは3.5ポイントの上昇となります。

女性社長の比率はまだ2ケタにまでは届きません。しかし着実に増加しています。

帝国データバンクの調査をさらに見ると、
社長就任の経緯は、女性社長は同族からの事業承継による就任が50.6%と最も高くなっています。
男性社長の場合、同族承継は39.2%です。

女性社長は同族承継の割合が突出して高いことが分かります。

ちなみに、年商規模別でみると、
年商5000万円未満の会社が11.4%で最も多く、
次いで5000万円以上1億円未満の会社が8.1%です。

規模が大きくなるにつれて、女性社長の比率は低下しています。

30年前と比較すると、
年商5000万円未満での女性社長比率は、1990年が7.8%だったので3.6ポイント上昇していることになります。

そして規模別でみるとき、年商5000万円未満の会社の3.6ポイント上昇が、最大の上昇幅となっています。

よって、中小企業で女性社長の就任割合が高まっていると言えます。

帝国データバンクの調査は自ら起業した個人事業主を除いていますが、
それでも女性社長が着実に増えており、しかも中小企業で特にその傾向がみられ、
そして社長就任の理由は、同族からの事業承継が半数を占めている、という実態が浮かび上がります。

社長就任はある日突然に

それでは女性社長たちは、満を持して社長へ就任しているのでしょうか。

エヌエヌ生命保険が行った調査によると、
事業承継した女性社長の50.0%が親、
25.7%が夫から引き継いでいますが、
自身が社長に就任することを以前から想定していた女性43.2%に対し
想定していなかった女性56.8%となっています。

事業承継の大半が身近な親や夫であり、状況把握が第三者より容易であるはずにもかかわらず、
過半数に及ぶ女性が事業承継を想定していなかったと回答していることは衝撃的です。

冒頭で紹介した2月22日の日本経済新聞が取り上げている女性社長の場合、
社長である夫の4年に及ぶ闘病生活の間に、途中から社員として働いていたけれども、
夫は復帰を目指して治療に励み、家族も社員も元気になると信じていたため、
社長を継ぐとは考えられなかったということです。

身近だから、かえって想定できないということもあるのですね。

こうして、社長就任にあたっての準備不足という事情が垣間見えてきます。

どうすれば良いのか

以上を総括すると、女性社長の比率は着実に増加しているが、
社長就任の契機は事業承継であり、
そして事業承継は妻や娘にとって想定外のこととして、
何の準備もなく突然に行われてしまうことが多い、と言えるのではないでしょう。

自ら起業された女性社長は、女性ならではの持ち味が生かせる、
あるいはご自身の知見や強みが活かせるフィールドを選択して起業されていることでしょう。

これに対して、事業承継した女性社長の大半は、自らその事業を選んだわけではありません。

女性特有の持ち味が生かせる事業だった、あるいは事業に活かせる知見や強みをたまたま持っていた、という幸運はそうそうあるものではないでしょう。

だから本来は、社長として振る舞えるための腕を磨き、そうして存在感を認知してもらうための準備期間がいるわけです。
しかし現実には、事業承継した多くの女性社長は明らかに準備不足と思われます。

今後、事業承継により社長を引き継ぐ女性が増えていくとするなら、これは決して放置されてはならない問題というべきでしょう。

それでは、事業承継の当事者になる可能性がある女性は、どうすれば良いのでしょうか。

先ずは、親や夫と話し合う場を持つことです。

しかし近親ゆえに、何がしか困難な事情もあることでしょう。
そのときには専門家を担ぎ出し、専門家を介して自身の想いを伝えることも考えてみてはどうでしょうか。

そして事業承継した後は、
経営の勉強をすることはもちろんですが、親や夫の仕事関係や人間関係構築の足跡を辿ることです。

関係構築をめぐるノウハウがきっとありますので、どのようにしてそのノウハウ獲得にたどり着いたかを探究するのです。
探究によって得る知見は、必ず自身の武器となってくれることでしょう。

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