皆さん、こんにちは!
社長リタイアサポーターの松田浩一です。
社長業を幸福に引退する一方で、新たな生甲斐を見い出して生涯現役を貫きたい社長は、財務を改善し知的資産経営を導入して、事業承継など社長業引退への備えを早い段階から進めるべきです。
ところで、事業承継には大きく3つのパターンがあります。
そのうち、これまで対象会社と縁のなかった第三者が会社を買収(ないし合併)する事業承継M&Aが今、注目されています。
この事業承継M&Aを地方銀行が支援する動きについてご紹介します。
お時間を作って、ぜひお読みください。
地方銀行がなぜ事業承継M&Aを支援するのか
コロナ禍で中小企業が打撃を受けたことはご承知の通りです。
日本政策金融公庫や商工中央金庫は無論のこと、民間の地方銀行も平時にはない高速で資金の貸し出しを行い、中小企業を必死で支えてきました。
しかし特に高齢の社長は、先行きが見通せない中で事業継続のために借金を積み上げることに二の足を踏み、むしろこれを機会に引退を前倒しで検討する社長が増えています。
そして引退=廃業と考える社長は少なくありません。
ただ、廃業は地方銀行にとっては取引先が消失してしまうことを意味します。
取引会社の廃業=消失が続けば、地方銀行にとっては将来がジリ貧です。
地方銀行からすると、社長の引退はやむを得ないにしても、
廃業でなく会社を第三者へ譲渡(第三者から見れば買収)してくれるならば、今度はその譲渡(買収)先と取引を継続することができます。
しかも、第三者は買収を考えるほどですから、今後さらに成長しようと意欲にあふれているはずで、成長に伴って融資が拡大することも期待できます。
こうした事情から、地方銀行が廃業を防ぎ、事業承継M&Aを支援する動きが活発になってきているわけです。
地方銀行の取り組み事例
例えば、私の地元にある京都銀行の場合、M&Aグループという部署を設置し、専担者11人を配置しています。
地方銀行の中ではトップレベルの陣容と言えるでしょう。
2020年度は譲渡案件の受託件数が過去最多となった模様です。
秋田銀行では、今年組織を改編して地域価値共創部を新たに設置し、同部が中心となって事業承継M&Aを後押しする体制を整えました。
ただ、事業承継M&Aを推し進めるには、特有のノウハウが必要です。
それは一朝一夕に身につくものではありません。
また何よりも、M&Aの相手を見つけなければなりません。これが大変で、そのための情報網が必要となってきます。しかし、地方銀行は営業地域が限られてくるため、情報網には限りがあります。
そこでこれを補うため、
京都銀行の場合は、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を活用しています。
秋田銀行の場合は、今年新たに経営コンサルティング会社のインクグロウと業務提携し、同社運営のM&Aマッチングサイト「事業引継ぎ.net」の活用を始めています。
「事業引継ぎ.net」は、東北では山形銀行も活用しています。
全国におよぶネットワークを活用することで、近県のみならず全国ともマッチングの機会が増え、相手先を見つける確率が高まることを期待しているわけです。
今後の課題
このように地方銀行が事業承継M&Aに力を入れ出しており、親族内に後継者がいない場合でも第三者に承継してもらうことで、雇用や固有の技術が守られ、地方経済に貢献することが期待されます。
ただ、いくら地方銀行が熱心に取り組んでも、肝心の社長がこういった取り組みをそもそも知らなければ、実を結びません。
こうしたことから例えば、千葉興業銀行は先月、日本M&Aセンターと初のオンラインセミナーを共催しました。
今はまだまだ、社長に対する啓発が重要なわけです。
啓発活動により社長が地方銀行の活動を知り、積極的に相談するようになるかが課題といえるでしょう。
また、地方銀行側も社長の個別相談にどこまで対応できるか。実力が問われることになります。
今後はこうした側面でも、銀行間の競争が繰り広げられるわけですね。
銀行間の競争が事業承継M&Aの促進、ひいては地方経済の維持発展につながることを大いに期待したいものです。
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