ワクチン接種が始まりましたが、コロナ禍は続きます。
多くの事業者にとっては、ビジネスへの逆風はまだまだ止みそうにありません。
しかし実質的に無利子、無担保である、いわゆるゼロゼロ融資は、民間金融機関が受け付ける分については3月末で終わってしまいました。
そこで、今後の資金手当をどうするか、悩ましいところです。
このような中で我々が注目すべき政策動向が2つあります。
第1に、金融庁が去る3月8日、金融機関に対して、事業者の立場に立った柔軟な資金繰り支援を行うこと、そして返済猶予などの条件変更へも柔軟に対応すべきことを要請しました。
第2に、ゼロゼロ融資の後を引き継ぐ制度として、伴走支援型特別保証制度が発足しました。
事業にとって、事業環境の変化は付き物。
変化には機敏でなければなりません。
事業者の皆さんは、新しい政策動向へ柔軟に対応し、事業の追い風にすることが求められます。
但し、追い風にするには、事業者側にも周到な準備が必要です。
以下では、上記の1番目の政策動向と、事業者が準備すべきことを解説します。
金融庁の危機感
昨年から貸し出しが進んだゼロゼロ融資は、3月末の残高が約22兆円にもなりました。
その約6割は、元本返済の据置期間が1年以内だと言われています。
ビジネスに逆風が吹く中、資金繰りの厳しさに配慮して、ゼロゼロ融資はスタートしました。
経済情勢が好転したわけではなく、長引くコロナ禍によって、状況はむしろ悪くなっている事業者も少なくないでしょう。
このような中で元本返済が始まると、多くの事業者の資金繰りがひっ迫しかねません。
そこで危機感を持った金融庁は、3月8日、金融機関に対して柔軟な姿勢で事業者を支援するよう要請したわけです。
これによって金融機関も、事業者から求められれば、既存の融資の元本据置期間延長や追加の融資を考えざるを得なくなっています。
先に述べたように、ゼロゼロ融資の約6割は、元本返済の据置期間が1年以内に設定されています。
今後、既存の融資の据置期間延長や追加の融資を金融機関に依頼したいと考える事業者は多くなると思われます。
事業者としては、ゼロゼロ融資(民間金融機関受付分)が終わったことに臆することなく、資金手当ての必要性をしっかりと金融機関へ主張するようにしてください。
今までとは違う金融機関の姿勢
もっとも、昨年と違って金融機関姿勢には変化があります。
昨年は、金融機関自身も自行庫内にコロナ感染が広がることを防ぐため、平時とは異なる人員体制をしかざるを得ませんでした。
そのうえに貸し出し依頼の殺到です。
正直なところ金融機関には、平時なら当然に行うべき貸し出し時の審査をまともに行う余裕はありませんでした。
しかし今は、昨年の経験も踏まえ、貸し出しリスクをチェックする体制を整えています。
従って事業者の皆さんは、申込みさえすればノーチェックで対応してくれた昨年とは違うということに注意して下さい。
金融機関は、事業者の依頼に応じて良いのか、しっかりとチェックしてくると認識してください。
チェックされるポイント
それでは、金融機関はどういうことをチェックしてくるのでしょうか。
大きく3点が挙げられます。
第1に、現状のまま推移すると資金繰りはどうなるのか、事業者の依頼に応じることで資金繰りがどう改善すると見込まれるのかチェックされます。
資金手当ての必要に迫られて金融機関に依頼するわけですから、その必要性はどの程度のものなのか、確認することは当然です。
これを知るために有効なものは、資金繰り表(実績表、予定表)です。
第2に、コロナ禍の中で、これまでどんな努力をしてきたのか、努力の成果は出ているのかがチェックされます。
無為無策の結果として資金繰りがひっ迫する事業者であるならば、金融機関が手を差し伸べても効果は一時的であり、そのような事業者には誰も貸したいとは思いません。
努力やその成果は、業績という数字となって現れます。
これを知るために有効なものは、貸借対照表や損益計算書(試算表)です。
第3に、今後どのような事業展開を計画しているのかチェックされます。
返済の原資を稼ぎ出すのは、将来に向けての事業活動です。
返済の原資が何時、どれぐらい稼ぎ出されるのか、貸し出す側としては、当然に確認すべきことです。
今後の事業展開を示すものは、事業計画です。
以上が、金融機関がチェックしてくる3つのポイントと、それへ答えるために必要となるエビデンスのご紹介となります。
エビデンスの中でも、特に事業計画は、言われても直ぐには準備できません。
既存の融資の据置期間延長や追加の融資を今後希望する事業者の皆さんは、
金融機関のチェックに耐えられるよう、できれば専門家の協力も得ながら、今からしっかり準備を始めてください。
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