中小企業における差別化戦略の実態

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皆さん、こんにちは!
社長リタイアサポーターの松田浩一です。
中小企業が生き残り、社長の幸福な引退に向けたストーリーをつくるためには、やはり売上と利益のいずれも伸長させていくことが大事ですが、問題はその方法論です。本稿では、その基本となる考え方について解説します。ぜひお読みください。

売上と利益の伸長には差別化が重要

私は、売上を上げて利益も出るようにするための方法論については生産性、その有力な手段として設備投資に注目しています。
加えてもう一つ、もっと注目していることがあります。それは差別化ということです。 

市場競争に勝つためには、「競争に勝てる他社との違いづくり」=競争戦略が必要です。
米国ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が唱えた競争戦略の4類型(コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、コスト集中戦略、差別化集中戦略)はあまりに有名です。 

競争戦略、その中でも差別化は今や常識であり、特筆するようなことではないかもしれません。
しかし、果たしてどれぐらいの中小企業がそれをしっかり戦略に落とし込み、満足のいくレベルで成果を挙げているでしょうか?
2020年版中小企業白書が参考になるデータを取り上げていますので、これを引用して話を進めていきたいと思います。
なお、記載されている数値だけ取り上げ、調査内容やデータの詳細は割愛しますので、白書でご確認ください。 

数値から見た差別化戦略

2020年版白書では、ポーター教授が唱えた競争戦略の4類型に従って、まず中小企業の競争戦略を概観しています。
これによると、以下のとおり全体としては差別化集中戦略を採る企業が最も多く、次いで差別化戦略を採る企業の割合が高いとのことです。

  • コストリーダーシップ戦略5.3%
  • 差別化戦略28.3%
  • コスト集中戦略9.9%
  • 差別化集中戦略56.6%

差別化集中戦略と差別化戦略の違いは、対象とする市場を広くとらえるか特化するかによる違いですが、いずれにしろ低価格ではなく、差別化で競争優位性の構築を志向する企業の割合が高いことになります。
但し、宿泊業・飲食サービス業、小売業、不動産業・物品賃貸業では、広い市場を対象とした差別化戦略やコストリーダーシップ戦略と回答する企業の割合が比較的高くなっています。上記はあくまで全体としての傾向であることはご留意ください。

面白いのは、競争戦略と営業利益率の関係です。競争戦略別の営業利益率の水準は次のとおりとなっています。

  • コストリーダーシップ戦略2.8%
  • 差別化戦略2.9%
  • コスト集中戦略3.0%
  • 差別化集中戦略3.4%

白書は「いずれの戦略が優れているということではなく、自社の強みや競争環境を踏まえて適切な戦略を採ることが重要である」と指摘します。
しかし特定市場をターゲットにした集中戦略、中でも差別化集中戦略を採る企業の営業利益率が高い傾向にあることは、やはり注目しておくべきでしょう。

経営者の自己評価は高くない

一方で、経営者は自社の戦略をどのように評価しているでしょうか。
2020年版白書は競合他社と比較した際の、自社の主な製品・サービスの競争優位性について、競争戦略別に見た総合的な自己評価も調査しています。

  • コストリーダーシップ戦略
    優位34.1% 同程度56.2% 劣位9.7%
  • 差別化戦略
    優位53.9% 同程度40.9% 劣位5.3%
  • コスト集中戦略
    優位37.8% 同程度53.0% 劣位9.1%
  • 差別化集中戦略
    優位57.3% 同程度36.7% 劣位6.0%

差別化戦略や差別化集中戦略を採る企業においては、競争優位を獲得していると自己評価する企業の割合は過半数となっています。しかし逆に言えば、競争優位を獲得できていないと自己評価する企業が40数%も存在しているわけです。

冒頭で、果たしてどれぐらいの中小企業が差別化をしっかり戦略に落とし込み、満足のいくレベルで成果を挙げているのだろうかと提起しました。
差別化を戦略の中核に据えながら、しかし実は「差別化もどき」に過ぎない企業が相当に多いのではないか。売上を上げて利益も出るようにするための方法論として、差別化を指摘する理由がここにあります。

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