皆さん、こんにちは!
社長リタイアサポーターの松田浩一です。
社長業を幸福に引退する一方で、新たな生甲斐を見い出して生涯現役を貫きたい社長は、財務を改善し知的資産経営を導入して、事業承継など社長業引退への備えを早い段階から進めるべきです。
ここにいう財務の改善とは、損益の改善だけでなく資金繰りの改善も含めていますが、資金繰りの改善には銀行の協力を取り付けることが欠かせません。
そして銀行の協力を取り付け、借入がしやすくなるには秘訣があります。
1部上場企業の元財務部長としての経験も踏まえ、銀行借入のコツをご紹介します。
お時間を作って、ぜひお読みください。
資金繰りが再び厳しくなると見込まれる事情
ご承知の通り、コロナ禍の影響を受けて、春から初夏にかけて企業の借入金は大きく増えました。
財務省が9月に発表した四半期別法人企業統計調査の結果によると、次の通りです。
短期借入金の残高
1-3月:158兆7017億円
4-6月:181兆6389億円
(22兆9372億円増)
長期借入金の残高
1-3月:264兆4020億円
4-6月:273兆5304億円
(9兆1284億円増)
全体で32兆円も増えています。
ところで、コロナ禍で増えた借入金の多くは、月商の数カ月分が多いようです。
これは、コロナ禍の悪影響をとりあえず乗り越えるための資金確保が中心だったためです。
しかし、コロナ禍の影響は想定以上に長引いているため、追加借入が必要な企業が増えるだろうと思われます。
ただ、今後の追加借入はそう簡単には進まないことが予想されます。
思い出していただきたいのですが、春から初夏にかけての銀行融資は、国の指導もあって緊急避難的色彩が強く、とにかくスピード重視でした。
融資のための審査は通常、時間がかかりますが、当時は一気に資金需要が発生したため、銀行の内部体制がこれに追いついていませんでした。
そのため、通常要求されるレベルでの審査は到底行われていません。
しかしその後、銀行も内部体制を整えました。
今後は本来のレベルで審査してくることが見込まれます。
返済できることをきちんと説明できないと、審査に通らないことになるわけです。
とは言え、コロナ禍が終息したわけではありません。
一時に比べれば経済活動は活発になりましたが、多くの企業にとっては、とても平年並みに回復したとは言えないでしょう。
つまり、返済できることの説明が簡単な状況ではありません。
そのような中で、不用意に追加融資を受けようとすれば、返済可能性の説明が不十分なため、審査が通らないことはあり得るわけです。
むしろ、春から初夏にかけて容易に借り入れができた経験が災いして、不用意な追加融資の申込みにより審査が通らないことが多発する恐れがあります。
こうしたことから、追加の借入が順調に進まず、企業の資金繰りが厳しくなることが予想されるのです。
銀行借入のコツとは
それでは、どうすれば良いでしょうか。
答えは既に示唆したように、十分な返済可能性の説明をすれば良いわけです。
私がかつて財務部長を務めていた会社は1部上場企業でしたので、四半期ごとに決算を発表し、その際に業績見通しを示しました。
また単に発表するだけでなく、取引銀行へ出向き、説明も行いました。
のみならず、平素から資金需要の見通しや資金使途を説明し、金融情勢や借入条件を意見交換していました。
このように銀行側が欲する情報の提供に努めることで、資金需要や返済見通しについて銀行と認識を共有しつつ信頼関係を構築し、同時にこちらの希望や都合を伝えて、貸出準備を促していたわけです。
銀行と言えば晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる例えが有名です。
しかしそれは、銀行というものを理解できていない人たちがつくった例えに思われます。
当たり前ですが、銀行業は慈善事業ではなくビジネスです。
たとえ公共性が高くとも、ビジネスである以上、経済合理性を外れることはありません。
返してもらえる見通しが立たない企業に融資することはありません。
経済は生き物だ。返済の絶対的保証などあり得ない、と反論があることでしょう。
もちろん、その通りです。
しかし、銀行が“持ちたいであろう”将来観測を現に持ってもらえるよう、周到に働き掛けることはできるのです。
こうした努力をすれば、雨の日に傘を取り上げることを防ぐことも可能なのです。
借入のために作成すべき資料とは
そこで、銀行が “持ちたいであろう” 将来観測を現に持ってもらえるよう、情報提供していくことが借入のコツになりますが、
ここで重要なポイントが、もう1つあります。
銀行員が会社員だということです。
つまり、担当の銀行員は自分の裁量では貸せません。
稟議・決裁が必要なのです。
ところが、これが銀行員には大変で、そのための資料準備に協力することが不可欠なのです。
このフォローによって、借り入れやすくなります。
それでは、その資料とは何でしょうか。
ズバリ事業計画書、資金繰り表、返済計画書、担保一覧表の4点です。
周到な準備によって、少しでも多くの企業の追加借入が無事に進むことを祈っています。
この記事へのコメントはありません。