街の洋菓子店の仕組みづくり

知的資産のイメージ

皆さん、こんにちは!
社長リタイアサポーターの松田浩一です。
中小企業が生き残りを図り、社長の幸福な引退に向けたストーリーをつくる上で差別化が重要ですが、そのためには強みと目される技術や技能、知恵や工夫を組織として使いこなせるように仕組みをつくることが重要です。
本稿では、この仕組みづくりに取り組んでいる企業の一例をご紹介します。ぜひお読みください。

ある洋菓子店を分析してみた

最近、ある洋菓子店を勝手に分析してみました。街角でよく見かける「街の洋菓子店」です。
お店から依頼されたわけでなく、私が個人的に勝手に分析しただけなので、十分な資料はなく表面から得られる情報だけに依拠しています。

なので、おそらくこうではないかという仮説の域を出るものではありません。まあ、それでも自分としては結構面白かったので、ここにその一端をご紹介します。

この洋菓子店は元々、腕の良い職人が70年ぐらい前に創業されたもので、当時としては珍しい部類のお店だったようです。
進取の精神にあふれていたのでしょう。のちに創業者の弟さんが海外へ菓子づくりの留学もしているほどです。その伝統を受け継いで、今も本格派の洋菓子をつくっています。

一番の強みは創業以来、腕の良い菓子職人がいることでしょう。
しかし、このお店が企業として優れているなと私が注目した点は、職人に洋菓子製造技能検定1級の取得を推奨し、第三者へ客観的に腕の良さを示せるようにしていることです。

もちろんお菓子ですから、腕が良いか否かは食べれば分かることですし、また食べなければ分からないと言えるでしょう。
ただ、「美味しい」というのはどうしても個人の主観に左右されます。また、食べるまでレベルを推し量る手段がないというのは、顧客開拓のための情報発信としては不足しています。

そう考えると、菓子づくりの技能を強みとしてその技能を磨くことに余念がないだけでなく、それを客観的に推し量れるよう努力していることは、企業としてやるべきことをやっていると評価したいと思います。

洋菓子店の仕組みづくり

しかも、それだけではありません。
このお店は、歴代の職人が菓子づくりの技能に自信があるだけに、これまで多くの商品を創作してきました。商品数が多すぎるくらいです。このこと自体は素晴らしいと思います。

ただ問題は、お店の規模からどうしても、それぞれの商品は小ロット生産になってしまいます。たくさんの材料が要り、しかもそれは日持ちがしません。
それでなくても生産効率を考えなければならないところへ、状況を放置することは廃棄が増え、飲食関係にとって大変重要なFLコスト管理に致命的となりかねません。

そこでこのお店では、商品数の絞り込みに取り組み、また菓子づくりの標準化(生産マニュアル作成)にも取り組んでいます。
レシピという商品の標準化はどこでもやっていますが、菓子づくりの作業を標準化する取り組みは、お菓子屋さんとしては初めて聞きました。

先に、お店には職人の腕を「食べること」以外の方法で客観的に示す発想があることを紹介しましたが、
菓子づくりの標準化(生産マニュアル作成)という発想が出てきたのは、正に職人の腕を客観化する発想があったればこそ、と私は思います。

おそらく多くの中小企業には、知恵や工夫を顕在化させ、組織として共有するという形態の仕組みづくりは、とても難しく面倒なものに映ることでしょう。
しかし「街の洋菓子店」という、ハードよりもソフトのかたまりで構成され、それこそ仕組みづくりが一番難しそうに見えるお店でも立派に仕組みづくりは行えるのです。

要は、社長にやる気があるかどうか、なのです。

私は常々、中小企業の社長が幸福な引退をするためには5つの力が必要と訴えています。
その一つに「資産化力」があります。事業を営んできた中で育まれた知恵や工夫を資産と呼べるほどに形あるものに仕上げていく力です。
それは、強みと目される知恵や工夫を組織として使いこなせるように仕組みをつくることで達成されます。

さきほど、仕組みづくりは社長のやる気次第と言いましたが、やる気の有無が後々、自分を助けることになるか、自分の首を絞めることになるか、という形で社長自身にブーメランのようにかえってくるのです。

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